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Zamami Promenade for collecting marine debris / 座間味の海中散歩道

海洋ゴミの苦しみを共有し、持ち帰るための散歩道

クジラは「苦しみを共有する」数少ない生き物である。多くの生き物は苦しみを抱くが、それを共有しようとは思わない。私たち人間は、あらゆる生き物と感情を共有しようと一緒に住んでいたりするが、時に苦しみを与える立場にいることも忘れてはならない。ホエールウォッチングは、同じ地球に生きる彼らと心が通じるきっかけになり得るかもしれないが、彼らの生活を脅かす根源的問題にこそ目を向けなければならないと思うのである。

座間味村は沖縄本島の西部近海に浮かぶ慶良間諸島に位置し、「ケラマブルー」の海が広く知られている。冬季、多くのくじらが繁殖活動のために座間味を訪れることから、研究・観光業としてホエールウォッチングが盛んに行われている。一方で、冬の季節風は座間味に大量の海洋ゴミを運ぶ。漂流するゴミは増え続け、自然界で分解されないマイクロプラスチックが生物の体内に蓄積されていく。

一方的に姿を見ようと近づき、ゴミを放置することで生態系を脅かす私たちは果たして苦しみを共有できているのだろうか。ホエールウォッチングに代わるような見る見られるの関係性、私たちのそれぞれの手でゴミを回収する方法を模索した。共生する未来のために、人間がクジラや海の生き物たちと交感し続けるための散歩道を設計した。

ゴミは海水と共に道の左右のスリットに吸い込まれる。ゴミは足元のポケットに収まり、海水のみがポンプにより排出される。私たちは集められたゴミの上を散歩し、それを拾い上げ持ち帰る事ができる。今までは衝突する可能性もある中、その姿を見るために一方的に近づいていた。これからの共生社会において、散歩の途中に出逢えるくらいの距離感が必要ではないだろうか。
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所在地:沖縄県座間味村
主要用途:橋、歩道(アンビルト)
設計:中村幸介

第56 回セントラル硝子国際建築設計競技 : 入選(5 位)
『新建築』2022 年1 月号 掲載
『a+u』2022 年2 月号 掲載

© Kosuke Nakamura 2025.