中村幸介

God of poverty comes in by a merry gate. / 笑う門には貧乏神も来たる

本公演は、大阪を拠点とする俳優、牛窪航平による自主企画公演であり、彼の初脚本、演出舞台でもある。若手俳優6人が集い、芸人と貧乏神による「笑いと運」をテーマにした人情劇は、漫才も披露され、3日間で500名ほどの観客を笑顔に変えた。

シーンは教室から始まり、電車、公園、アパートの一室、漫才劇場、病室、ラジオブースと場面が続く。舞台美術 として「場」を構成するにあたり、10のシーンを断片的に繋ぐのでは無く、照明によって多様な表情を見せる場がグラデーショナルにシーンを繋ぐ事を考えた。

そのためにまず、舞台上に吊られている線状に連なったフレームの高さを操作する。屋根や壁の輪郭を浮かび上がらせ、神様は超えられるけれど人間は越えられない境界線を引くことができた。これは演出と美術が一体となり始めて、観ている私たちに実感させることができるものである。

また、床を這う小さなフレームたちは舞台と観客の物理的境界線となるが、演者が川に飛び込むシーンにおいてはそれが濁流越しの対岸に見えたのかもしれない。

舞台美術の多くが公演直前に組み上げられることから、デザインする段階で演出家の想像を掻き立てられるよう配慮した。特に場面転換の多い、複雑な物語であるため、印象的なシーンの具体的表現に早い段階で落としこまず、全体と部分を繋ぐための抽象的な議論に多くの時間を掛けた。


舞台公演名:笑う門には貧乏神も来たる
所在地:大阪市立芸術創造館
主要用途:舞台美術
設計:中村幸介
製作:田尻尚大
公演期間:715,16,17(終了済)
写真:jasminum(sns@hello_jasminum)

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