Nakagin capsule renovation competition / 中銀カプセルリノベーションコンペ

2022年に解体された中銀カプセルタワー。黒川紀章はこの未来を想像していたのか、バラバラになったカプセルはそれぞれが別の場所で再利用されて生まれ変わろうとしている。当時のメタボリズム思想とその空間を、現代そしてこれからを生きる私たちが手を加えながら継承するという事は、建築史の1頁として終わらせないという心意気であり、愛情だ。

そのうちのひとつをリノベーションして滞在施設とするコンペティションが行われた。敷地は防風林に囲まれた斜面地であり、近くに太平洋を眺められるという場所であった。黒川のカプセル空間に手を加えることに少し慎重になってしまうものではあるが、当時の暮らし方を想像して、その体験をどう次の敷地に引き継ぐかという事に集中した。
窓から眺める銀座の風景は、首都高を走る自動車のライトがとても忙しかっただろう。今回の窓には太平洋の緩やかな波が延々と続いて見えるだろう。そうした新旧の対比すらも想像しないような、風景とつながっているという体験を設計できればと考えた。カプセルに唯一設けられた、歴史的アイコンである円形窓は借景窓として海を近づける、床から天井まではグラデーション塗装で青に染まる。曲線的で軽快なスチール製のテーブルや棚が空間を柔らかく分節しつつ、カーテンの最低限の間仕切りで開放感のある空間を作る。照明はペンダントだけでなく、植栽裏や棚に間接照明を計画し、太陽の移ろいに合わせて調節を可能にする。


所在地:
主要用途:宿泊施設(アンビルト)
設計期間:2024.5
設計:中村幸介

© Kosuke Nakamura 2025.